作り方の本だけを頼りにお菓子を焼き続けて製菓の学校で基礎の大切さを知った私の後悔

書かれた分量と時間だけを信じて失敗を重ねた独学の日々

製菓の道に進む前の私は、作り方の本を何冊も買いそろえ、書かれたとおりに作れば必ず上手になれると信じていました。分量を正確に量り、指定された時間どおりに焼けば同じお菓子ができるはずだと考え、手順を忠実になぞることに夢中でした。

ところが、同じ本の同じお菓子を作っても、焼き上がりが毎回違い、膨らまなかったり焦げたりする失敗が続いていきました。本に書かれていることを守っているのに、なぜうまくいかないのかが分からず、何度も同じところでつまずいていたのです。

失敗するたびに別の本を買い足し、違う作り方を試しましたが、どの本を使っても仕上がりは安定しないままでした。今思えば、原因は本にあったのではなく、書かれていない部分を読み取る力が私に欠けていたことにあったのだと思います。

たとえば泡立ての加減を角が立つまでと書かれていても、どの程度の角なのかを自分の目で判断する基準を持っていませんでした。言葉の意味は分かっていても、実際の生地の状態と結びつけられなかったため、書かれた目安を生かしきれなかったのです。

オーブンの癖や材料の温度など、本には書ききれない条件の違いが仕上がりを左右することにも、当時は気づいていませんでした。指定の時間で焼いても家のオーブンでは足りないことがあると知らず、生焼けのお菓子を前に首をかしげるばかりでした。

失敗の理由を考えずに作り方だけを替え続けたことが、遠回りを長引かせた一番の原因だったと、今は振り返っています。本を読む量は増えても、一つの失敗から学ぶ姿勢がなかったため、知識が技術として身につかないままだったのです。

もっと早く、なぜ失敗したのかを一つずつ確かめる習慣を持っていれば、独学の時間ももっと実りあるものになったはずです。その悔しさがあるからこそ、これからお菓子作りを学ぶ方には、同じ遠回りをしてほしくないと強く感じています。

作り方の行間に隠れた理由に気づかされたきっかけ

転機となったのは、思い切って製菓の専門学校に入り、先生の手元を間近で見ながら基礎の実習を受けたことでした。同じ作り方でも、先生が生地を混ぜる手つきや泡の状態を確かめる目の動きには、本からは読み取れない情報があふれていました。

実習では、なぜこの温度で混ぜるのか、なぜこの順番で材料を加えるのかという理由が、一つひとつていねいに説明されました。理由を知ることで、本に書かれていた短い一文の背後に、どれほど多くの意味が込められていたのかが初めて見えてきたのです。

砂糖が泡を支える働きや、粉を混ぜすぎると生地が固くなる仕組みを学ぶと、過去の失敗の原因が次々と腑に落ちていきました。あのとき膨らまなかったのは泡を消していたからだと分かり、悔しさと同時に、ようやく前へ進めるという安堵を覚えました。

状態の目安についても、実際の生地を見て触れて覚えることで、本に書かれた言葉と目の前の状態がつながるようになりました。角が立つという表現がどんな姿を指すのかを体で覚えてからは、作り方の本を読む目そのものが大きく変わっていったのです。

仲間と同じお菓子を作って仕上がりを比べる時間も、自分の癖や判断のずれに気づかせてくれる、貴重な学びになりました。一人で本と向き合っていたころには得られなかった気づきが、人と比べることで次々に生まれていくのを実感しました。

学校で基礎を学んでから改めて昔の本を開くと、以前は読み飛ばしていた注意書きが、とても大切な助言だったと気づきます。本が悪かったのではなく、読み手である私に基礎が足りなかったのだと分かり、本への見方もすっかり変わりました。

行間に隠れた理由に気づく力は、基礎を学ぶことでしか育たないものであり、それこそが独学の私に足りなかったものです。遠回りはしましたが、失敗を重ねた経験があったからこそ、基礎の一つひとつの意味を深く受け止められたのかもしれません。

本や作り方を味方にするために今だから伝えたい読み方

今だから伝えたいのは、本や作り方は答えを教えてくれるものではなく、考えるための手がかりを与えてくれるものだということです。書かれた分量や時間はあくまで目安であり、自分の台所の条件に合わせて調整する前提で読むと、失敗の受け止め方も変わります。

作るときは、手順を追うだけでなく、その工程で生地がどんな状態になっていればよいのかを確かめながら進めてみてください。状態の目安に注目して作るようになると、時間どおりに進まなくても慌てずに、目の前の生地に合わせた判断ができるようになります。

失敗したときは、別の作り方にすぐ乗り換えるのではなく、どの工程で何が起きたのかを書き留めて振り返ることが大切です。記録を重ねていけば、自分がつまずきやすい箇所や、台所の癖が見えてきて、同じ本からでも多くを学べるようになっていきます。

一冊の本を繰り返し使い、同じお菓子を何度も作ることも効果的で、回を重ねるごとに作り方の意味が少しずつ深く分かってきます。たくさんの本を広く読むよりも、一冊を深く読み込むほうが、基礎の力を確かなものにするうえでは近道になるかもしれません。

基礎となる理論を解説した本を一冊手元に置いておくと、作り方の本で分からないことが出てきたときに理由を調べられて心強いです。作り方と理論の両方を行き来しながら学ぶことで、一つの失敗から得られる学びが何倍にも広がっていくのを感じられるはずです。

独学で続けるにしても学校で学ぶにしても、理由を考えながら作る姿勢さえ持っていれば、本は頼もしい先生になってくれます。私が遠回りして気づいたこの読み方を、これから学ぶ方が最初から身につけていれば、上達の道のりはずっと短くなるでしょう。

本や作り方から学ぶ力は、学校を卒業してからも新しいお菓子に挑戦するたびに役立つ、作り手にとって一生ものの技術です。失敗を恐れずに作り、なぜそうなったのかを考え、また本を開くという往復を、楽しみながら続けていってほしいと願っています。

まとめ

作り方の本を頼りに手順をなぞるだけでは、書かれていない条件の違いを読み取れず、失敗を重ねてしまうことがあるのだと痛感しました。製菓の学校で基礎の理由を学んでから、本に書かれた短い一文の背後にある意味が見えるようになり、過去の失敗の原因も腑に落ちました。

本や作り方は答えそのものではなく考えるための手がかりであり、自分の台所に合わせて調整する前提で読むことが上達への近道です。状態の目安に注目して作り、失敗したら工程ごとに書き留めて振り返る習慣を持てば、一冊の本からでも学べることは大きく広がります。

作り方の本と理論を解説した本を行き来しながら学ぶことで、一つの失敗から得られる気づきが何倍にも深まっていくのを実感できます。理由を考えながら作る姿勢を持っていれば、独学でも学校でも、本はいつでもそばで支えてくれる頼もしい先生になってくれるはずです。

私が長い遠回りの末にたどり着いたこの読み方を、これからお菓子作りを学ぶ方には、どうか最初の一冊から取り入れてほしいと思います。失敗を恐れずに作り、考え、また本を開くという往復を楽しみながら続けることが、確かな技術を身につける何よりの道になるでしょう。